実効的な防災対策支援を!

8月8日の宮崎県地震により、政府は南海トラフ地震の臨時情報を出し、地震に備えるよう、警戒を進めています。

1週間ほどと言われていますが、いつまでの警戒期間なのか、見通せないところです。

今年元旦に発生した能登半島地震でも土砂災害が発生し、本日東北地方に直撃している台風5号をはじめこれからの台風シーズンの到来は、治水対策・土砂災害対策が必要になります。大規模な土木工事を要するため、すぐにはできませんが、しっかりと計画を立てて対策を講じる必要があります。

土砂災害警戒区域・特別警戒区域の指定

土砂災害防止法の施行後、平成13年度より、我が国の国内において、土砂災害警戒区域(通称:イエローゾーン)、土砂災害特別警戒区域(通称:レッドゾーン)が指定されました。

日本治水砂防協会の資料によると、令和6年3月末時点で、土砂災害警戒区域が約69万4千区域で、このうち特別警戒区域が約59万6千区域になっています。

ちなみに令和4年8月時点で、

川崎市の土砂災害警戒区域が749区域、特別警戒区域が552区域、

麻生区の土砂災害警戒区域が304区域、特別警戒区域が234区域、

多摩区の土砂災害警戒区域が171区域、特別警戒区域が136区域と、

多摩区と麻生区で市内の6割以上を占めています。

区域指定と対策

 先日の議会質問では、令和4年度から試行的に始まった、人工衛星による土砂災害警戒区域の崖の変動観測について質問しました。この観測と解析により、これまで市の職員が年間500件を目視点検していたことから、毎年の変動の観測により、リスクの高い場所を優先することが可能になります。

 また、災害時にどの範囲に被害が出ているかも衛星から観測をすることが可能です。

 一方、静岡県では国の補助金を活用し、県内の大半の地域の3次元点群データを取得しています。3次元点群データを取得したことで、熱海で発生した土砂災害の時に、崩れた場所の元の3次元での形状だけでなく、流出した土砂の量の計測もできたという実績があります。

 川崎市には公図混乱地域が存在し、仮に大地震が発生した場合は復旧が困難と言われています。公図混乱地域で災害が発生した場合の一つの参考としては、課税台帳になりますが、建物や擁壁の形状を3次元座標で情報集積できる点で、3次元点群データは有効です。これは文化財や工場配管等についても3次元座標を取ることで、復元作業を行う場合に有効になりますので、今後の活用が期待できます。

 そこで、災害後の復旧・復興を考え、3次元点群データの取得を進めるべきと提案しています。

区域指定だけでなく防災対策工事の支援を!

警戒区域や特別警戒区域に指定された区域への周知や開発行為の規制等の「啓発」の観点での対応はすぐに進められます。

しかし、対象区域の防災対策の工事は、複数の所有者による土地が多いことや補助制度が充実していないことから、なかなか前進していない実情があります。

 災害リスクが高い区域指定をされることで資産価値が低下します。一方、是正工事をすることで、区域指定を解除できることもあります。

 全国の土砂災害警戒区域・特別警戒区域を一律に実施することは厳しいものの、まずは、人口密度が高い地域への対策工事の支援を、調整面・費用面から国は制度設計すべきです。