水道料金制度見直しの前に経営改革を!

明日から始まる川崎市議会定例会では、工業用水道事業の料金改定について議案として上程されます。

6月議会の活動報告として月本たくやレポートの内容をアップします。工業用水道は上水から一部の水を提供しているため、工業用水道を先行すれば、自ずと水道料金にも影響が出ます。

水道料金は来年度で見直しを検討されますが、水道料金制度の話、意識改革・経営改革の話、そして、技術人材の話について、書きました。

水道料金制度の見直しへ

 川崎市の水道は、大正10(1921)年に給水が始まり、私たちの生活で利用する上水と、1937(昭和12)年に始まった特定の大規模な工場が利用する工業用水道(工水)があります。工水には一部上水から供給されている経過があり、上水・工水の経営は連結している側面があります。

 工水は、工場の水利用が減る中、大規模工場の撤退から、さらに経営が厳しくなり、9月の議会で料金見直しが予定されています。

 上水についても、川崎市の人口が増加するものの、工場のような大口利用者が減少傾向にあります。また、大口利用者は環境負荷をかけていることから、多く使えば単価を上げて負担を大きくする逓増型料金制をとっています。つまり、大口利用者の減少や家電の節水技術の向上により、人口が増加しても、水道使用量が減り、水道料金収入が減少することにつながっています。

 このような厳しい経営状況において、水道料金制度の見直しが検討されることになりましたが、果たして、やれるべき経営改革は行っている上で見直しなのかを確認する観点で3点の質問をしました。

①業務委託費は適正なのか?

水道事業は、メーター検針や施設管理など、様々な面で業務委託を行っています。

しかし、上下水道局が直営で行わず、業務委託を始めてから、数十年を経過しているものもあり、委託を始めた当時から事情が異なるものもあるため、改めて直営と委託での比較を行いました。その結果、一部の事業で、委託の方が直営よりも高くなっているもの、今後、委託の方が高くなる可能性のあるものが出て来ましたので、委託事業の見直しを上下水道局に求めました。

②生田浄水場用地問題

生田浄水場は、上水・工水の浄水場から、工水のみの浄水場になり、旧上水の用地は将来的な建て替え用地として残されています。この用地をAnkerフロンタウン生田として川崎フロンターレに貸付け、一部は市民開放施設として同社に管理委託をしています。直接水道に関連しないものの、貸付収入により経営を助ける目的の事業にあたります。

貸付収入が年5,784万円、維持管理委託費が年3,148万円なので、この用地で毎年2,636万円の収入があると、一見プラスだからいいのでは?と錯覚しそうになります。

そもそも、上下水道事業は、一般的な市民サービスである一般会計とは別の企業会計で独立し、基本的に水道料金によって成り立っています。このため、市民開放施設を作る場合は、この用地を一般会計に貸し付けて、税金で整備・管理すべきです。一方、嫌悪施設に分類される下水関連施設については、下水道事業会計から地域還元のための例外的な支出があり、例えば、麻生水処理センターのふれあいの丘はこれにあたります。

ここで、生田浄水場用地の貸し付けについては2つの問題が発生しています。1つは、経営を助けることが目的の貸付事業に紛れ、水道料金を原資に市民開放施設に支出をしているということです。2つ目に、麻生水処理センターはおよそ2万平米で年間の維持管理費がおよそ1,000万円に対し、生田浄水場の市民開放施設は1.5万平米で年3,148万円と、それぞれ平米あたりに換算すると4倍になる矛盾があります。

上下水道局は、15年前に水道局と建設局の下水道部門が合併して発足しました。局内で上水・下水が別々で風通しがよくないと言われて来ましたが、市民開放施設を検討する際に、このような局内調査さえしていない状況は組織的な問題もあることを指摘し、生田浄水場の維持管理委託費の見直しを求めました。

③12万円の椅子問題

 昨年11月から、今年の7月まで、川崎市役所は新本庁舎への移転、他の庁舎から既存の第3庁舎への移転など、大規模な移転事業が進められました。上下水道局は、私たち市議会と同じ旧第2庁舎にありましたが、第3庁舎に移転しました。第2庁舎より第3庁舎の方が新しいため、上下水道局は、第3庁舎で使われていた什器(じゅうき・いわゆるオフィス家具)を使用することにしましたが、古くなった備品は、移転のタイミングで局の予算で支出することになりました。

 そこで、上下水道事業管理者室(上下水道局は局長とは言わず、事業管理者と言います)、管理者会議室、職員80名が入る大会議室の什器が購入されました。

 ここまでは、問題はない話なのですが、金額を見て驚きでした。管理者室の会議用椅子が1脚あたり約12万円でこの椅子と会議用テーブルの合計が216万円でした。

 経営が厳しくなるから、これから料金見直しという事実上の値上げしようというのに、高級家具の購入をしていることについて、金額までは管理者は知らなかったと答弁しています。

管理者への忖度か?発注決裁した総務部長の金銭感覚の欠如か?いずれにせよ、職員の経営感覚に問題があります。

現在、水道料金見直しが検討される中、上下水道局が組織として根本的な意識改革と経営改革を管理者に求めたところ、昨年度から総務部に服務担当を設置し、組織風土の改善をはかっていると答弁がありました。しかし、忖度?金銭感覚の欠如?そんな総務部が果たして組織風土の改善をできるのか?甚だ疑問ですので、経営改善がどれほどされていくか、今後も注視して参ります。

確かな技術人材の確保と育成

川崎市上下水道局は、年発生した能登半島地震を始め、これまで多くの被災地に職員を派遣し、現地の緊急対応や復旧に向けた支援を行って来ました。これまで培われて来た職員の技術力は、管路の破損や災害時等、特別な機会にしか触れることができません。しかし、ライフラインの生命線である水道の技術は継承される必要があり、技術人材の確保と育成は急務です。確かな人材を確保していくためにも、上下水道局の意識改革は急務です。