自民党総裁選が始まりましたが、党員投票が影響した特徴的な総裁選と、党員投票での結果と実際に当選した人が異なる総裁選について振り返ってみました。
今回は衆参ともに与党過半数割れをしてから初の総裁選挙になりますので、総裁になったから総理大臣になれるとは限らないという、総裁選後に総理大臣指名選挙という新たな選挙対策が必要になる選挙でもあります。
昭和53年
私が生まれた昭和53年11月9日は、総裁選の真っ只中でした。この総裁選で福田赳夫総理が、現職でありながら自民党総裁選挙で敗れ、退陣することになりました。
「民の声は天の声、天の声も変な声がたまにある」
という言葉を残し、福田赳夫総理は退陣しました。
総裁選挙の予備選挙、言い換えれば、党員投票によって敗北したため、本選を辞退しました。
予備選期間において、自らが優位と考えていた福田総理は「100点差がついたら、2位の候補は本選を辞退すべき」という旨の発言をしていたものの、逆に110点差で敗北し、自らの発言通り、本選を辞退しました。
現職総理が、総裁選で事実上の敗北による辞職は、現時点において一回だけですが、自らの発言を甘んじて受けたという点では、その先の結果が見えていたとは言え、潔いものと考えます。
平成13年
次に、平成13年の総裁選は、森喜朗総理の辞意表明により、橋本龍太郎元総理が再登板を目指し、小泉純一郎氏、亀井静香氏、麻生太郎氏が立候補していました。
通りかかった渋谷駅での小泉氏の街頭演説には人だかりができ、田中眞紀子氏の「お陀仏発言」があったその演説会の聴衆の一人で、応援演説をする平沢勝栄氏の公明党批判を松島みどり氏が制止しようとする場面があったように記憶しています。
この選挙では、国会議員票を圧倒的に固めている橋本氏の再登板が優位と考えられていたところ、小泉氏が党員の予備選で圧倒的多数を獲得したため、亀井静香氏が小泉氏支援に回るとして本選を辞退しました。
勝ち馬に乗るという見方があるかもしれませんが、亀井氏は潔かったと思います。
平成24年
その後、平成24年の総裁選は、自民党野党時代、谷垣禎一総裁が続投の意向を表明するも、石原伸晃幹事長が出馬の意向を示し、総裁幹事長での調整ができず、谷垣氏は不出馬を表明。また、安倍総裁再登板を目指す中、同派閥の会長の町村信孝氏が出馬を表明し、町村派の分裂選挙になりました。
この時の党員投票では、石破茂氏が1位になり、本選の1回目も石破氏が1位になるも、決選投票で安倍氏が勝利し、総裁再登板し、その後の衆議院総選挙で政権を奪還し、総理大臣再登板を果たします。
安倍氏のその後の実績があることから、国会議員投票は党員投票より正しいと考えるようになったのか、「あいつだけは嫌だ」の決選投票なのか、のちの総裁選は後者のような気がしますが・・・
令和3年
次に行われた、令和3年の総裁選は、菅義偉総理が再選を目指すはずでしたが、コロナ対応の評価と、直前に行われた地元横浜市長選挙の敗北が大きな引き金となり、詰め腹を切る形で辞意を表明しました。
下馬評では、党員の支持と若手議員からの支持を掴んでいた河野太郎氏が圧勝するものと思われていました。
河野氏は党員投票では1位であったものの、国会議員得票は岸田文雄氏、高市早苗氏に次ぐ3位の本選で1票差の2位に。決選投票では多くの国会議員の支持を集めた岸田氏が勝つことになりました。
令和6年
その後、令和6年の総裁選は、岸田総裁の不出馬表明により、史上最多の9名の候補者による総裁選になりました。多くの派閥の解散後、初の総裁選になり、国会議員票の動向が見えないものになりました。
本選の1回目の投票では、党員投票で1位、国会議員票で2位の高市早苗氏が1位、国会議員票1位で党員票3位の小泉進次郎氏が3位、そして、国会議員票も党員票も2位の石破氏が2位で、上位2名の決選投票になりました。残り7名に投票した票の動向が読めないまま、決選投票で石破茂氏が勝利しました。
令和7年
石破茂総理が、なかなか辞めず、辞めるタイミングを失わせようとしているかのような状況で、総裁選を前倒しすべきという流れで、事実上の解任を言い渡させそうになって、ようやく辞意を表明。
小林鷹之氏、茂木敏充氏、林芳正氏、高市早苗氏、小泉進次郎氏と、出馬した5人とも昨年の総裁選の候補者でした。
党員投票の結果が左右しそうな報道がされていますが、自民党員は全盛期500万人いたのが、今では90万人台になっています。かつてはフリーで党員になっている人も多かったようですが、現在では業界団体や国会議員・地方議員のノルマ党員が大半を占めていますので、党員投票も組織戦になる可能性があります。
今後の論戦がどうなるか、党員ではなくても比較第一党の党首選は総理に近い人物を決める選挙で、結果により、連立の枠組みも変わる可能性がありますので、注目が必要です。
「党を一つにまとめる」や、「信頼回復に努める」という言葉が聞こえて来ますが、主役は党や党所属の国会議員ではなく、主役が国民の我が国について、国民生活と経済について、閉塞感や不安感を希望に結び付ける未来を切り開く政策を論じてもらいたいですね。
