福田市長が昨年の9月に提出を見送った特別秘書設置に関する議案が提出されることになりました。その関係議案は次の3つです。
・議案第86号によると、特別秘書を市長の裁量で任命できるもので、2名以内、任期1年で再任を妨げない。(業務内容等について規則や要綱で別途定めるという規定なし)
・議案第87号によると、特別秘書に給料(月額61万円以内)、地域手当(月給の12%)、通勤手当、期末手当及び退職手当を支給するというもので、最高年収およそ1100万円。
・議案第115号一般会計補正予算によると9月以降年度内で2名分の最高額で設定。
市長秘書って?
市長秘書には大きく分けて3種類。現在の川崎市の場合は2種類になります。
①行政職の市長秘書(一般行政職地方公務員)
市長は行政府の長ですので、通常、総務局秘書部秘書課に所属する市長秘書(係長級)がサポートします。この市長秘書は業務が多いため、平成16年度までは1名でしたが、平成17年度より2名体制になりました。狭義には市長秘書はこの係長級を指しますが、広義には秘書部全体で市長の秘書機能を担っていると言えます。
②政務秘書(私設秘書)
市長は行政府の長でありながら政治家の顔も持つため、政務活動に関するサポートを行う私設秘書。給料は政治団体から支給されるケースが多く、私が阿部市長時代に経験した職でもあります。
③特別秘書(特別職地方公務員)
この特別秘書は、特別職地方公務員で、現在の川崎市にはそのような制度はありません。行政の仕事をするのか、政治活動をするのか、その両方なのか、まったくわかりにくい区分です。
では、行政職の市長秘書と政務の私設秘書の二つがあって、何故このような制度があり、また問題になるのでしょうか?
そもそも特別秘書は何をする人?
特別秘書の職務内容は明確な規定をしている自治体もあればそうでない自治体もあります。
例えば、特定の政策を補佐するために外部から登用する参与のような位置づけであったり、寄せられる陳情への対応や議会対策に限定されている位置づけであったりと、政治的側面を持ちつつも、明確な活動範囲を限定するような見解を持つ自治体があります。
しかし、このような業務は、特別職として、また議会承認が必要となる副市長が行うこともできるため、敢えて特別秘書を採用する理由が明確に必要になります。
今回の議案では、国等との政治的活動に関する点、議員の会合に代理出席する場合に必要という趣旨の発言が聞こえますが、業務内容が明確ではありません。
議員の会合に代理出席した場合、市長の後援会活動に踏み入れる危険性が非常に高く、疑惑を招きます。
勤怠管理や待遇は適正なの?
特別秘書の月給の最高額が61万円、諸手当や期末手当を含めると、年収最高額1100万円ほどで、この金額は市長が決めるということです。
特別秘書制度のある自治体の中でも破格の待遇で、先ほどの秘書課に所属する市長秘書は係長級ですが、今回の特別秘書の給料は最高給で部長級。
そこまでの業務を行うかどうかの詳細がまったくない状態です。
しかも、今回の条例は非常にシンプルで、市長が採用し給料を決められるということ以外は記されておらず、例えば、「業務内容等について規則等で定める」などと言った条文もありません。
また、私が調べた限り、県や政令指定都市の特別秘書の中で最大年収は最高額ということも不思議です
特別秘書が問題になっている自治体はないの?
都道府県や政令指定都市で導入されている自治体もありますが、制度があっても在職者なしの自治体もあります。
それは、特別秘書の位置づけが曖昧で誤解を招きやすいという点と、必要性の問題があるという点の2点です。
この特別秘書について裁判で係争中の自治体があります。
特別秘書を設置する以外の方法は?
政策的サポート機関が必要と考えた場合、川崎市には総合企画局という部署があり、市長により直轄にするには、自治体によって導入されている「市長公室」の設置による組織改編も一つの手段です。
また、特定政策分野への対応を進めるのであれば、参与を設けることも可能です。
これらの手法で行政職員では問題になる可能性がある部分については、副市長が担うというのが行政機構として筋の通る話になります。
すなわち、疑惑を招く特別秘書を設置する以外に手段を尽くしているとは言えないわけです。
特別秘書設置議案の審査ポイントは・・・
①必要性
・何のための特別秘書なのか?
・特定政策の参与ではいけないのか?
・3名の副市長だけでなく、特別秘書が必要な理由は?
②業務の範囲や勤怠について
・業務内容や勤怠管理等の要件が定められていないため、様々な誤解を招きやすいということについて。これは、「勤務要件等について、別途規則で定める」などという記載がないが、具体的な要件はどのようになっているか?
・特別職の地方公務員という立場で、後援会活動や選挙準備行為に関わる危険性があるが、具体的な線引きをどのように考えているか?
・業務範囲や勤怠管理が明確で疑惑を招かないような裏付けができているか?
③特別秘書設置の効果と評価について
・効果と評価をどのように検証するか?
・副市長の職務の範囲に影響がどのように出るのか?
・総務局秘書部の業務内容にどのような変化が予想されるか?秘書部の人員削減やその他の設置効果は期待できるのか?
④政治姿勢について
・特別秘書について裁判で係争中の自治体があったり、仙台市のように制度が60年以上前からあっても実際に設置されていない自治体があったりする中で、設置するのはなぜか?
・昨年秋に否決が確定的になったために、提出を見送った条例案を何も変えずに提案すると当然同じ結果が予想されるわけだが、なぜ敢えて同じものを提出するのか?
議会開会に向けて
いま川崎市の財政が非常に厳しい状況にあります。そして、昨年、兵庫県議会で話題になった政務活動費の問題から、政治とお金の問題が指摘される昨今、どうして、このような議案が出て来たのか、非常に疑問です。
また、市長は自らの退職金およそ3000万円を受け取らないという公約を掲げていましたが、特別秘書については何も触れられていませんでした。場合によっては、自らの私設秘書を4年最大の金額で2名雇うことも可能になり、およそ8800万円の増額になるため、理解に苦しみます。
我々議会は、「誰が特別秘書になるか?」ということを考えるのではなく、特別秘書制度を市長との議論を通じ、より内容を明確にした上で、審査して行かなければいけません。
各会派の代表質問でこのようなポイントをしっかり確認し、審査して行きたいと思います。