地域包括ケアシステムが始まって~後編:未来を考えて~

今のいま、いきなりシステムを根付かせるのは難しいわけですが、地域包括ケアシステムの基本的な考え方は、福祉教育の場から身に着けていく必要があります。そこで、ライフステージに合わせた福祉教育を考えていかなければいけません。

 

ライフステージ教育を各世代に

さきほどの課題を解決する地域福祉を考える上で、福祉教育が大切になります。

子どもたちから中高年までの間に様々な角度から考えていくことが必要です。言い換えれば、各ライフステージで何が必要か、何を考えておかなければいけないかを、それぞれの年代に合わせて考えていくきっかけを作らなければいけません。

川崎市立小学校の中には、福祉の副読本の活用による福祉教育が行われているケースもあります。ただ、総合的学習の授業で使用している事例が主であり、すべての児童が学んでいるわけではありません。そのため、まだ詳しい実態が分からない状況ですので、今後、教育委員会が調査していくということですが、こういった教材の活用による効果を検証していく必要があります。

また、学校に通っている間の福祉教育を含めたライフステージ教育は大変重要で、社会人を対象としたものは、生命保険によるリスクヘッジや資産運用等で考えている人もいますが、この機会をどのように促していくかが大切です。大企業の場合は、研修や福利厚生の面で対応しているものがありますが、大半の人が勤める中小企業では、そのような機会が少なくなります。

そこで、最近耳にすることのある「健康経営」をキーワードに対策を考えることを提案します。

 

中小企業の健康経営

いま、「健康経営」という言い方があり、経済産業省では「健康経営銘柄」を示す取り組みがなされていますが、これも大企業についてです。

中小企業は、日々の業務に追われ、企業として「健康経営」という視点で率先して取り組むということは皆無に等しいと考えます。

そこで、行政が「健康経営」によるメリットを示し、中小企業をバックアップしていく必要があります。ニーズがなくてもトレンドをリードしていくのが「健康経営」の大きな役目でもあります。

福利厚生を高めることや、その機会を活用してライフステージを考えるきっかけづくりにつながります。

しかし、中小企業から市に対し、健康経営に取り組みたいので支援してほしいという要望が出ることは考えられないので、「市に要望が来てないからやらない」と後回しにせず、健康経営に取り組むことで企業の人材確保や離職防止につながるメリットを市が分析し、きっかけを作っていくことが必要です。

例えば、企業が健康面でのケアが出来ていたり、離職率が低かったりというポイントが企業の魅力につながっていきます。そのような機会を市としてバックアップしていくことが、市内の労働力確保にもつながります。

そこで、中小企業の健康経営への取り組みを紹介したり、従業員向けのセミナーを開催したり、ライフステージについて考える機会をつくって行き、健康について考え、地域での福祉についても考える機会につなげていくことを提案しています。

地域包括ケアシステムがしっかり機能するためには、多様なサービスを理解するだけでは足りません。サービスの選択をする上で、何が最適かを考えられるように、まずは一人一人に情報や意識を伝達していくことが重要なのです。