厚生労働省は待機児童の定義を統一する方針とのこと。
自治体によって待機児童の定義が異なり、実際に待機児童としてカウントされている場合と、理屈をつけてカウントから除外するケースがあります。
そこで「潜在待機児童」という言葉ができてしまいました。
待機児童と潜在待機児童ってどうちがうの?
待機児童は、各自治体の定める基準によりカウントされるもので、実際は待機児童なのに含まれない人がいます。
他方、潜在待機児童は自治体が示す待機児童にカウントされない実際の待機児童を示します。
川崎市基準で見てみると・・・
まず、認可保育所に利用申請している人を母数としていますので、認可以外の保育所に一番目に申請して外れた人は、待機児童にカウントされないわけです。
認可保育所に入れないけど、市の保育施策で対応している「認定保育園」「保育ママ」「おなかま保育室」「一時保育」「幼稚園預かり保育対応」「事業所内保育」を利用できている人はカウントから外れます。
ここまでは、認可に入れなくてもとりあえず保育サービスを受けられているという点でまだ理解できます。
次に除外されるのが、産休・育休中。
平成26年4月 433名
平成27年4月 348名(待機児童0達成と言った昨年)
平成28年4月 461名
さらに、ここからはどう考えてもトリックなのは、第1希望のみの申請者、主に自宅で求職活動を行う申請者。
まず、第1希望のみの申請者が外れたら待機児童にならないということ。
第二子の入所申請をする際、第一子が入っている保育所だけにした場合は外れます。
他の保育所の可能性がないからしょうがない?という理屈なのでしょうが、兄弟姉妹で同じ保育所に通わせるというのは、普通に親の希望ではないでしょうか?
平成26年4月 409名
平成27年4月 407名(待機児童0達成と言った昨年)
平成28年4月 503名
待機児童数ばかりに着目していると、同じ条件の子どもがいる場合に、第1希望のみの申請者を優先的に外されてしまうのではないかと思われてしまいますよね。
次に、平成25年度から始まった、「主に自宅で求職活動を行う申請者」ですが、
平成25年4月 39名
平成26年4月 166名
平成27年4月 129名(待機児童0達成と言った昨年)
平成28年4月 173名
ということになっています。
平成24年度までなかった、「主に自宅で求職活動を行う申請者」を外すというのは、働きたいけど、保育所入所できない以上、また逆に働けないということになりますし、このカウント除外が始まり、今年は過去最高。
あるお母さんとのやり取り
「上の子と同じ保育所だけ申請して入れなかったので、待機児童なんです」
「第1希望だけだと待機児童にカウントされないですよ」
「えっ、待機児童の6人はうちのことだと思っていたら」
「500人ぐらいいます」
数の一人歩き
今のは川崎市の例ですが、これはそれぞれの自治体でカウント方法が異なるため、「待機児童ゼロ宣言」なんて言っている自治体だから保育所に入れると限ったわけでもありません。
さらに待機児童ゼロという言葉に連られて、その自治体に引っ越される方もいますが、集中してしまい横浜も川崎もゼロ宣言した翌年は待機児童(自治体カウントですが)が発生しています。
特に川崎市では平成27年度中も新しい保育所をつくって定員増に努めていますが、それ以上に増えてしまったということです。
そこで、全国統一のカウント方法にしましょうということです。
私の考えでは、保育所を増やすだけのハード型政策を進めるだけでなく、自治体はソフト面での政策を進め、保育所入所以外の選択肢をとれる家庭にはそのような対応を推進していくべきと考えます。こういった相談窓口がいわゆる「保育コンシェルジュ」です。
しかし、コンシェルジュが活躍して、ニーズに応えられるようにするには、保育サービスだけでなく、子育てサービス全般の観点から制度を見直していく必要があります。
今回の厚生労働省の待機児童カウントの定義統一を契機に、数の一人歩きではなく、子どもたちのため、社会全体のためになる制度設計づくりの第一歩にして行きたいと思います。