同性パートナーシップ承認制度の議論

昨日、陳情第123号「川崎市における同性パートナーシップの承認制度創設に向けた協議開始に関する陳情」の審査が行われました。

同性パートナーシップの承認制度は、渋谷区が始めたのを皮切りに、世田谷区、札幌市、福岡市、大阪市など8自治体で実施されています。

現在の同性パートナーシップ制度は、いわゆる同性婚と言われていますが、法律上の婚姻にあたらないため、パートナーシップの公的承認といった点に留まっています。

 

同性パートナーシップ制度の対象者

性的マイノリティの方々について、LGBTという表現が使われていますが、L=レズ、G=ゲイ、B=バイセクシャル、T=トランスジェンダーの頭文字を使用しているもので、LGBは性的指向、Tは性自認に分類されます。

 

性同一性障害の方は、戸籍上の性別変更が可能であり、変更後の性において、その異性と法律婚が可能になっています。それ以外の性的マイノリティの方々を対象に自治体で同性パートナーシップ制度を創設している経過があります。

 

制度のメリット

このパートナー制度は、携帯電話会社の家族割に適用されたり、企業によっては福利厚生を受けられたりする証明をできる点で、ただ関係をオープンにするだけでなく、公的な証明の一つになり得ます。

また、里親制度では、婚姻関係にある男女に限らず、同性カップルも養親になることが可能ですから、その証明の一つにもなると考えられます。

 

法的な課題

法律婚であれば、専業主婦(夫)の配偶者が亡くなった場合、遺族年金を受け取ることができますが、この制度では遺族年金の受給対象になりません。

また、法定相続人になり得なかったり、法律婚のように夫婦共有財産という観点がなかったりしますから、パートナーシップ解消や主収入を担う一方が亡くなった場合を考えると、同性カップルの場合は、「専業主婦(夫)」を選択することが難しいという問題点があります。

そして、自己申告になりますので、そもそも性的指向をどの基準でどのように定めるかという客観的事実を積み重ねた基準の設置も必要になります。

 

制度の致命的な問題点

同性パートナーシップ制度には、法的な課題がありつつも、制度の検討を進めるべきと考えていましたが、ある決定的な問題点があり、この制度を自治体で進めるにあたっては慎重にならざるを得なくなりました。

私自身、これまで請願や陳情の審査に挑んだときは、調査研究の上、結論を決めた上で、委員会に出席していますが、今回は、自治体で進める上で、致命的な問題があったため、出席時には「採択」で考えていましたが、「継続審査」を適当としました。

 

同性パートナーシップ制度を導入している自治体では、他のパートナーがいたり、法律婚をしていたりしないことの宣誓書が必要になります。

しかしながら、例えば、世田谷区で同性パートナーになったあとで、川崎市に転居し、異性との間で婚姻関係になる、いわゆる重婚を防止しているかと言えば、自治体間での共有は行われていないという事実です。

言い換えれば、自治体を転居すれば、同性と異性での事実上の重婚が可能になるということです。

 

他の制度との違い

ここでこの制度を運用する上で重要なのは、制度の悪用があってはいけないということです。

当然、どの制度も悪用はいけませんが、同性パートナーシップ制度は、人権の根幹に関わるセンシティブなものです。

制度を創るのは他都市の真似をすればできるかもしれませんが、その運用で不正が行われれば、制度そのものを全否定されるだけでなく、差別や偏見を助長する危険性があります。

 

特に、「人権を認める」という観点で始まった制度です。

しかし、「人権は認めるだけでなく、守られなければいけないもの」という観点が欠如しているのが、現在の自治体での制度ではないでしょうか?

 

ではどうすれば?

どのような性的指向も表に出したくないという人はいらっしゃいます。その点において、同性パートナーシップ制度は、性的指向をオープンにする方の制度です。

トランスジェンダーの方で、性別を変更する場合には、多くの条件が必要になり、これは法律で定められています。

同様に、性自認による性別変更と、性的指向によるパートナー制度という点での違いがありますが、性的マイノリティの人権を認め、守ると制度いうことになると、これは、一自治体で決めるだけでは、限界があると考えます。

先ほど指摘した重婚の可能性を踏まえ、自治体として性的マイノリティの理解・啓発を進めることは重要です。
しかしながら、同性パートナーシップ制度は、社会保障や相続など法律に関わる部分が多いため、国として取り扱っていくべきものと思います。