少子化が始まったのは戦後すぐ。
「一人の子どもにたくさんのお金をかけて育てたい」という親の想いを利用して、日本を少子化に導いているという説を本で読んだことがありますが、私は真偽の程はもう少し研究したいと思いますが、この説が概ね妥当であると思います。
我が国は、「子宝」と言い、子どもを授かることが素晴らしく、女性が出産することに敬意をもって、また、子だくさんの家庭に憧れる国民性が根本にあります。農耕民族なので、将来的には田畑を耕す働き手と考えられていたのかもしれません。
国民の人口増加は国力強化につながります。
そこで本来ならば国が子どもを産み育て教育を受けさせる費用の負担の幅を広げることは、少子化の歯止めを掛ける政策としては効果的です。2015年実施の国立社会保障・人口問題研究所による「第15回出生動向基本調査」の結果によると、理想の子ども数3人以上の夫婦が3人以上を実現できない理由として、経済的理由が7割近くを占めています。
そこで、重要なのは、多子世帯支援です。
私立大学を卒業することを前提に考えた、子ども一人を育てるお金は3,000万円かかると言われていて、みなさん、真面目に3,000万円を考えます。
現在の問題は、一人と二人では倍の支援にならず、三人になっても、一人の二倍にも満たない支援になっているということです。
子ども一人を育てるのに、一生の買い物と言われているマイホームと同等の金額がかかるという前提に立ち、多子が消極的になった経緯があったわけです。
立ち止まって考えると、日本の大学生の多くは、一部の熱心な学生を除き、学士という資格を得にいくようなものですが、進学率が五割になり、本当に大学に行った成果を社会で活かしているか、甚だ疑問です。しかも、大学生の四割近くが貸与型の奨学金を受け、卒業後には600万円の借金を背にして社会に出ます。ゼロからのスタートではなく、マイナスからのスタートです。
子どもは国の宝ですよね?
そこで、戦後七十年。
少子化政策は成功し、今では子どもにはお金が掛かるという負担意識が根付き、子宝から子どもを負担のような扱いにする言葉さえ出て来ます。
でも、考えてみてください。
「子どもは社会のもの」
「子どもは国の宝だ」
と言われますが、大人になるまでにかかる費用は多くの部分では税金から賄われているものの、個人で負担する金額が非常に大きい社会になっています。
お金を負担すべきは誰?
そう、社会全体で負担するべきなのです。しかし、やみくもに負担するのではなく、子どもたちそれぞれに合った使い方をすべきですし、子どもたちがどのような家庭環境にあっても機会平等にチャレンジできる社会を構築していくべきです。
そのためには、費用だけでなく、子どもたちが社会観や職業観の醸成をできる環境づくりが必要です。
ひとりあたりいくら?に流されるな!
この議論から始まることほど危険なことはありません。それぞれの家庭における労働環境や家庭環境が異なり、社会貢献活動も人それぞれの部分がある中で、「ひとりあたりいくら」という物差しは一見わかりやすいようで、そこを基準に議論すると、都市間比較で損得という議論になり、本質からずれてしまいます。
社会のあり方を考え直す時期
コロナ禍で大きなマイナスからのスタートになります。
しかし、成熟社会と言われて来た我が国の現在からすると、これまでの流れを軌道修正できず、立ち往生が長く続いていましたので、コロナの影響により、考え方を変革する時期にもなっています。
例えば、消費税の議論も、消費拡大を考えると、一時的な減税も一つの手段です。他方で、財政がひっ迫しているため、減税により破綻を引き起こさないようにしなければいけません。という、減税派と増税派の議論はここで終始してしまいます。
でも、増税に納得しないのは、納税が安心につながらないからです。
そこで、本当に社会において、最低限で必要な部分は何なのか?を改めて考えていく必要があります。
納税と安心
まずは、生命に関わる医療です。
コロナ禍において、我が国が他国に比べ死亡率が低いことが報道されます。それは、日本人が勤勉で意識が高いからということではなく、医療が安価で受けられるからという国民皆保険制度がその背景にあり、医者にかかるということが日常的だからとも言われています。
でも、医療費の個人負担分はありますから、家計によっては医療を受けることを我慢するという医療抑制につながっているケースがあります。また、障がいのある方が医療を受ける際もアクセスやコミュニケーションから医療抑制につながっているケースがあります。そこで、多子世帯の医療費の個人負担の軽減を進めることは、命を生むだけでなく、命を育むことにつながります。
次に、子どもにかかる費用です。社会に出る前に借金する大学生、所得格差が引き起こす教育格差の是正は大前提であると考えます。大学進学率が上がるとGDPが上がるというデータがありましたが、逆に大学進学率と失業率を比較すると相関関係がないというデータもあります。そこで、社会教育をしっかり行い、将来の進路を意識しながら勉学に励む、あるいは実務教育を受けるということは重要です。大学等の高等教育機関や農業高校や商業高校等の専門学科設置高校への進学を考える上でも、小中学校での社会教育が重要になります。また、所得格差が教育格差につながっている点を補うために、塾代助成制度の検討も進めるべきと考えます。
そして、年金保険問題です。多子世帯ですと、子どもの人数に応じた保険加入をされている方も多いと思います。また、多子世帯の親も同様に年を取るわけで、年金型の保険を掛けているケースも多いと考えられます。そこで、民間の保険加入者への税額控除を拡大させることで、これまで計画的に考えて対応して来た人にとっても新しい制度で損をしないということになります。安心の老後は、安心の子育てにつながります。
政治を考えよう!
社会保障の充実した国は、税金が高い!
なんてよく言われますが、さらに、投票率が高いという特徴もあります。
税金が高い分、使い道を考えたいという理由が強く、子どもの頃から政治の議論をする傾向があるのも特徴です。
我が国では、教育における政治的中立性の拡大解釈から政治制度の説明があっても、政治を考えるトレーニングはされて来なかった歴史があります。
そこで、主権者教育は重要ですし、先ほど例に挙げた社会教育の機会が広がることで政治への関心も広がります。
「小さな政府」「大きな政府」という思想や結果の軸から始める議論よりも、我が国の子どもたちの将来の選択の幅を広げられる政治を行うことが大切であると私は考えます。
そのために、様々な社会問題を通じ、政治を考えていきましょう!