昨年、亡き父のゆかりの品が、父の友人経由で私のもとに来ました。
それは、恵比寿様と大黒様の顔が陶器で作られた壁掛けでした。
この壁掛けは、父にとっては特別なものでした。
父は昭和26年に淡路島の農家に生まれました。
子どもが欲しいものを「ねだる」ということが少ない時代、小学校に上がる前の父は神社のお祭りで売られていたこの大きな壁掛けを祖父にねだったそうです。
神社から自宅まで10キロほどの距離がありましたが、「自分で持って帰るなら」と言うことで祖父が買ってくれたそうです。
父の幼児期、恵比寿様と大黒様がどんな神様かもわからなかったそうですが、どうしてもほしかったようで、あとにも先にも祖父にねだったのはこれだけだったと父は話していました。
後に父は大阪に出て商売人になったので、その当時から何か感じるものがあったのだろうと思います。
金継ぎ師
父が亡くなって15年が過ぎた昨年、この壁掛けが私の手元に届きました。
しかし、大黒様の顔が割れてしまっており、どうしたものかと苦慮していました。
そこで、陶器作りを趣味にしていて、その活動の幅を広げている方に聞けば、何とかなるのではと言うことで相談すると、王禅寺東に金継ぎ師さんがいるという情報を頂きました。
金継ぎ師?
聞き慣れない名前です。
ホームページを見ると、陶磁器の割れや欠けを修繕するということで、漆で接着したあと、修理箇所を金や銀なでで覆う方法を取るようです。
器の修繕では修理箇所に金や銀が入ることで美しさを増す写真が掲載されていますが、顔を修繕するというのは、どうなのかなと思い、金継ぎ工房隆竜さんを訪問。
断られるかもしれないと思いましたが、二つ返事でお引き受け頂き、修理を終えたものが今日戻って来ました。
見た瞬間、どこが破損していたのかがまったく分からず、もとのとおりに再生されました。
多少目立っても仕方ないと思って修繕に出しましたが、ことのほか素敵に仕上がり、感動しました。
金継ぎ師さんの技術は、単に生む芸術ではなく、生まれ変わらせる芸術です。
人の想いを大切に、そして伝えていく芸術がここにもあるんだと思いました。
金継ぎ工房隆竜
http://ryu2kintsugi.wix.com/kintsugikoubou