検討と研究

kento議会の会期中ですので、議会用語の話。

議会で質問をすると、お役所の答弁は、市民代表の市議会議員にできないときっぱり言うことはほぼない。

そこで、「研究」という言葉を使います。

「ご指摘頂きました課題につきまして、研究して参ります」

1年目にそんな答弁を受けた私は、2年目に「昨年の答弁で研究するとのことでしたから、その研究結果を教えて下さい」と白々しく質問したことがあります。

1期目だから出来たことかもしれません。

自治体ごとで多少のニュアンスの違いがあるのでしょうが、川崎市の場合、「検討して参ります」は前向きにやる方向です。

川崎市議会はやたらと答弁調整をします。常任委員会はフリートークですが、本会議や予算決算の特別委員会はほとんどが事前に質問と答弁をやり取りします。会議を見ている側はつまらないのですが、事前にやり取りすることで、質問内容を取り違えていて、それを説明する時間が省略できます。議会によっては「反問権」という、行政側が質問を聞き返した場合に質問時間の時計を止めるというシステムのあるところもあります。

川崎市議会の場合、フリートークの委員会では聞き返すことはよくありますが、本会議や予算決算の特別委員会では事前のやり取りが多くを占めるため、このような場面は少ないです。

で、事前にやり取りしていたらつまらないのですが、このやり取りが真剣勝負になります。防犯カメラの設置補助制度のときは、事前のやり取りで消極的だったものを「検討」に変えさせ、その後一年で実行させることに成功したことがあります。

また、聞いていないことを答弁するようなことも防止できるので、行政側がトボけて逃げることを防げます。

でも、その事前のやり取りには、多くは部長か課長(まれに局長)が来るのですが、どうしようもないときは、議場で市長や局長に調整していない質問をすることも。

私はたまにやるので、答弁の可能性のある理事者(市長や局長などの行政側の管理職)は、私の質問をよく聞いています。無通告質問をやるまでは、直接尋ねていない理事者とは目が合わなかったですが・・・

他の議会では、質問は通告するけど、答弁はその場で初めてという場所が多いようです。

戦の前に戦がほぼ終わっているのが川崎市議会の特徴ですが、逆に終わっていると思って油断しているところに「桶狭間の奇襲攻撃」のようなことも出来ます。

ですので、事前に質問のやり取りをするかしないかで、それぞれ一長一短あります。

 

質問のやり取りをしていると、予定答弁を示されますが、意外とあっさり「検討する」という答弁が来ることがあります。これは、可能性とリスクの整理をしつつ提案しての結果。かつて、名刺の公費化の提案をする議員がたくさんいましたが、旧自治省通達でできないという答弁の繰り返しでした。私は名刺の機能をもつプロモーションカードの提案をしましたが、これが一発で「検討」で、その後市政90周年のタイミングで導入されました。でも、こんなケースはまれで、いつもは、それでもなかなか前に進まないので、あの手この手を尽くすのが質問。

結果を出すために、質問があり、その質問の成果まで数年かかることがあり、できた頃に、よくなった結果をみんなで喜び合うと同時に、自分が提案したことがきっかけだと、たくさんの人が忘れていますので、ひとりで喜んでいることもしばしば。

覚えていてくれた市民や行政職員の方が、「初めに提案されたものが結びついてよかったですね」と声をかけてくれることも稀にあり、結果への評価をしてもらえることもあり、嬉しいときもあります。

 

地味なことばかり、また、成熟した社会になっているので、何か一つで解決することはない時代になりました。

分かりにくいこと、難しいこと、ひとりではできないことをじっくり解決に結び付けていくことが大切で、「研究する」ではなく「検討する」と人を動かすのが、われわれ市民代表の役割です。