主権者教育vol.5~政治的中立性の判断~

cyuritsu主権者教育を進める上で、政治的事象を取り上げ、議論することは当然のことで、そこで課題になるのは政治的中立性の判断です。

英国では、11歳から16歳の中等学校段階において、教科として必ずしも独立しているわけではありませんが、主権者教育が必修化されています。

英国の主権者教育は、社会に対する責任感や参加意識、政治的な判断力を身に着けることを目的にしており、時事問題、社会的論争についての知識の習得だけでなく、議論を通じた探究や意見の対立を解決する方法、模擬投票等の体験を重視した学習が行われています。

しかし、このような議論は、我が国おいて、教育基本法第14条第2項「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」という規定に関係してしまうと過大に判断され、我が国の教育現場では様々な意見の存在をも取り上げない傾向にあります。

他方で、英国、米国、ドイツなどにおける政治的中立性の標準的な考え方は、「対立する立場をフェアに紹介することと、それぞれの立場について正確な情報を伝えることが重要である」としています。

社会問題や地域課題について考え、市民が政治に参加していくためには、政治的な判断力の育成が求められます。

政治的中立性は、英国等の事例のように、意見対立を解決する方法を学ぶ目的としての主権者教育を進める際、政治的テーマを取り上げないということで中立性を確保するのではなく、取り上げ、それぞれの意見をフェアに紹介することが大切です。

また、国によってはフェアな事例紹介を行った上で、児童・生徒から教員の意見を求められた場合、自らの考えを答えるという事例がありますが、このような場合、本市の学校現場ではどのように対応するかと言うことも、明確にはされていません。

さらに、総務省の「常時啓発事業のあり方等研究会」最終報告書が出てから4年が経ちました。この中でも「政治的・社会的に対立する問題を取り上げ、政治的判断能力の訓練が避けられて来ている」ことが指摘されています。

主権者教育は、18歳選挙権という公選法改正以前に進められているべきですが、今なお文部科学省から示されるガイドラインを待っている状況です。

教育現場で現在でも起こり得る政治的中立性の課題を解決しない限り、主権者教育が活発に進むことにはならないため、早急な対応を教育長に求めました。