不思議な処分量定

我が国は法治国家であり、裁く場合は、何かのルールに基づいた処分になり、処分の軽重には、法的根拠や過去の事例等を考慮し、その量定を行うべきです。

しかし、昨今の処分量定は、国も地方も恣意的もしくは感情的だったり、取るべき人が責任を取らなかったりと、政治不信が続きます。

国政における政治資金問題は、政治資金収支報告書不記載問題だけでなく、政策活動費問題も取り上げられましたが、最終的に不記載問題だけがクローズアップされました。

不記載の処分量定は?

まず、不記載問題で自民党が処分を発表しましたが、不記載は金額の大小に拘わらず処分すべきですが、不記載の方針を考えたとされる派閥幹部を重く、不記載だった議員は金額により処分を分け、500万円未満は処分なし。二階元幹事長は引退表明をしているから処分しない。さらに元会計責任者が有罪になった派閥の長である岸田総裁も処分対象にならなかったという結論。

国会議員は、一人一人が国権の最高機関の構成員として、その意思決定に関わる人物である以上、派閥幹部に言われたから甘いとか、金額が少ないからどうかという処分量定は適切ではありません。

野党も絡んだ政策活動費の話は?

次に、野党も含めた「政策活動費問題」はどこへ行ったのでしょう?

政党の政治資金収支報告書に「政策活動費」名目で個人に支給されていて、某党元幹事長が50億円と取り上げられたあと、野党の党首クラスも数千万円で支給されていました。

パーティー券の不記載問題の追及に元気な野党もこの問題についてはほとんど触れないのは、自分たちにも降りかかるからです。

最後は与野党関係なく「政治にお金がかかる」という言い訳になります。

野党も含め、政策活動費を見直すとともに、政治資金規正法の改正をすべきです。

政治資金規正法の問題は別の機会に書かせて頂きます。

川崎市上下水道局の処分量定問題

昨年9月、川崎市議会決算審査特別委員会環境分科会で、川崎市上下水道局で、特殊な浄水装置を導入する際に市長の関与が推察される内容を記した会議メモ問題が取り上げられました。このメモは局内の共有に保存されていたデータで、このメモを職員が議員にリークしたものです。

上下水道局は調査を行い、メモの内容は事実ではない旨を説明しました。

しかし、その後、このメモを作成した職員、このメモを議員に提供した職員を特定するような調査が行われ、事実ではないとされるメモを公式な共有に挙げた職員には、いわゆる口頭注意程度であった一方、このメモを議員に提供したとされる職員が停職1月という重い処分を受けました。

ここで、不思議なのが、議員に情報提供したとされる職員(状況証拠で、本人は認めていない)のPCを調べたところ、職務に関係のないサイトを閲覧していた「職務専念義務違反」や管理職であるという事情を考慮し、重い処分に至ったと言うことです。

職員が公益通報を行った場合は特定も処分もされないわけですが、今回は通報した職員を特定し(当該職員は認めていない)、その職務用PCの中を調べ、別件を含めた「合わせ技処分」をしたことで、処分量定の問題として、議会からも厳しい意見が出ています。

処分からつながるものがない!

まず、自民党の不記載問題は、特定の派閥に限定されたり、特定の議員は処分しなかったりと処分量定に問題があり、国民は納得できず、自民党内からも不信が上がっています。

次に、政党の政策活動費問題は、処分以前に言い訳で終わり、政治資金規正法改正に至りませんでした。

そして、政治家ではなく行政職員が対象になった川崎市の上下水道局のこの事案の処分により、公益通報に対し、委縮してしまったり、見て見ぬふりをしたりと、ただでさえ公益通報に勇気がいるところ、更に厳しい状況になります。

法治国家でこのようなアンフェアな処分・取り扱いでいいのでしょうか?

アンフェアな取扱いは、がんばって生きる人々の夢や希望を壊します。

私たち政治家は、自分や身内・所属する組織に甘くしてはいけません。

この気の緩みが、我が国の成長を阻害します。

処分は未来に生きる人々のためにつなげなければいけません。

13年前、私が初当選した際、とある市役所の局長を務めた方から言われた言葉を思い出します。

「月本君が斬ろうと思った時は、俺たち市役所OBの顔を思い浮かべて、遠慮するな。君に斬られるなら本望だ」

私の政治姿勢や性格をよくご理解頂いての言葉と思います。

残念ながら、この方は数年前に亡くなられましたが、この言葉が胸に突き刺さっています。

「泣いて馬謖を斬る」

諸葛孔明が軍律に背けば、可愛い弟子をも斬った処分量定。

師でも先輩でも斬れと言ってくれた市役所OBの方は、天国から今の状況をどのようにご覧になられているのだろうと思います。

処分は未来につなげることが大切で、人々が夢や希望を持てる未来づくりを目指し、これからも取り組んで行きます。