地域包括ケアシステムが始まって~前編:現状への対応~

地域包括ケアシステムが始まって、1年になりました。

この制度は、高齢者や障がいのある方をはじめ誰もが、住み慣れた地域や自らが望む場で暮らし続けることができるよう、地域において「介護・リハビリテーション」「医療・看護」「保健・予防」「福祉・生活支援」などの必要なサービスが必要な方に提供されるための仕組みとして始まりました。

しかし、介護サービスが多種多様であり、一般的にサービス内容の違いがわかりにくいという課題があります。また、家族に迷惑をかけたくないという人の気持ちで施設入所を希望するお年寄りも多いのが実情です。

そこで、地域包括支援センターが窓口になり、様々なサービスを丁寧に説明し、介護メニューを作っているので、それがきっかけとなり、多くのサービスを多くの方に理解してもらうことにつながっています。

それでも、なかなか地域包括ケアシステム自体を理解するのは難しく、「今日からこの制度になったので、地域で暮らしていきましょう」というわけにはいかないのが現状です。

 

地域で暮らすための環境整備の課題

介護が必要になっても高齢者が地域で生活しやすい環境をつくるために「地域密着型サービス」という数種類の介護メニューがあります。そのうちの、小規模多機能型居宅介護事業が伸びないという課題があります。この事業はデイサービスやショートステイ等の数種類のサービスを同じ施設で出来るということで、実は利用者にとっては慣れた環境で過ごせるというメリットがあります。しかしその一方で、事業採算性が低いデメリットがあり、事業参入が進んでいない課題です。

この事業が増えていくと、より地域で暮らしやすくなりますので、認知症高齢者グループホームの要件緩和の検討も含め、サービス普及が望まれます。

次に、地域で見守る人材の課題についてです。年初に日本老年学会が発表した65歳から74歳を指す「准高齢者」と言う表現は記憶に新しく、また衝撃的でした。「70歳は高齢者じゃない?」という疑問もありますが、他の制度と一致してくる点もあります。それは、昨年12月に一斉改選が行われた民生委員です。民生委員の任期は3年で、昨年の一斉改選で制限年齢が引き上がりました。川崎市の年齢制限は、新任72歳未満(任期満了時75歳)、再任75歳未満に変更されました。74歳までを准高齢者と裏付けるような出来事でした。民生委員が地域を見守り、適宜アドバイスを行い、できる限りのお世話をしています。しかし、民生委員は定数が引き上げられましたが、なり手が少なく厳しく、川崎市は微増したものの充足率は決して高くない数字になっています。

ハード面の地域密着型サービスとソフト面で寄り添う民生委員の活動を紹介しましたが、このハードとソフトの2つの視点が大変重要で、さらには、自分や家族を含め、福祉への考え方を身に着ける機会の拡大が必要です。