「書記」と言う言葉は、児童会や生徒会以外で聞くとしたら、会議の議事録を取ってもらう人ぐらいで、大人になって社会で「書記」と直接関わる仕事をしている人は少ないと思います。
また、「書記」というと、特定の政党の役職のように思われるかもしれません。
私たち川崎市議会の運営をサポートする議会局職員は「書記」と呼ばれています。そして、その中でも日常的に「書記」の肩書で呼ばれることが多いのが、委員会の担当書記です。
書記と言えば、会議録をまとめていく仕事なのかと思いきや、現在は本会議では速記者(委託)が記録し、会議録署名議員3議員が署名し、議長が決裁します。委員会では録音したものを委託業者が会議録に起こし、委員長→副議長→議長の順に決裁します。当然、決裁に関わる事務的なサポートを書記が行うわけですが、ここまで聞いていると、「書記って暇じゃん?」と思われるかもしれません。
しかし、常任委員会の担当書記は、生徒会の書記のように記録するだけではなく、事務的なサポートを行います。
書記は委員会の事務的な助っ人
そもそも、常任委員会委員会の担当書記は議事と調査の各1名が配置されます。
議事担当は委員会の日程や運営について、調査担当は所管の政策に関する調査や調査の補助を行います。
委員長に開催権限がありますので、委員長が委員会を開催するにあたってのサポート、行政側から委員長への開催要請等があった場合の調整に始まり、正副委員長レクの補佐、各常任委員会は11~13名の委員構成ですので、各委員との調整事務等、正副委員長だけでなく、各委員のサポートも行います。
正副委員長が委員会運営を行う中で、委員会はフリートークであることから、突然状況が変わり、イレギュラーな議事運営になりそうなときに、委員長がルールを確認する場面があります。
また、近年委員会中継を実施していますが、その中継機器のオンオフを行うのも書記です。
市民の方々が書記に触れる機会としては、請願や陳情の提出です。
請願や陳情が提出される場合は、請願者や陳情者に書き方や提出方法、審査についての相談を受けたり説明を行ったりするのが書記です。また、審査の際、請願者や陳情者が傍聴に訪れますが、傍聴者の数をあらかじめ確認し、人数が多い場合やテレビカメラが中継に入る場合は、他の委員会と委員会室を変更するような調整の補助も委員長の指示のもとで行います。
議員と書記の日常のやり取りの例としては、政策の他都市事例の調査や、現地訪問しての視察調査の手続き等もサポートしてもらいます。また、委員会発の意見書案や決議案づくりは、正副委員長の指示を受け作成のサポートを行います。
ゆえに、私たち議員同様に、委員会がない日も担当書記の仕事はたくさんあります。
委員も書記も異動する
私たち委員が所属委員会を基本的に1年交代でするように、書記のみなさんも毎年担当委員会が変わることが多いです。
書記の多くはおおむね5年程度で異動し、5委員会ありますので、大体それぞれの委員会を経験して異動して行きます。
ゆえに私たち議員は、毎年所属委員会が変わることで担当書記が変わることが多いのですが、たまたま異動した委員会に同じように動くという書記がいることがありますが、2年ぐらい一緒になることがあっても、3年を超えるのはほぼ奇跡です。
同僚議員でも、12年で同じ委員会になったことがない議員がいれば、何回も同じ委員会になる議員がいます。
例えば、亡くなられた鏑木茂哉議員とは9年中5年同じ委員会でしたが、同期の添田勝議員とは12年目にして初めて同じ委員会になり、同室の吉沢章子議員や重冨達也議員とは同じ委員会になったことがありません。
議員は定数60で3期12年目でメンバーが変わっていますから、延べ人数ではそれ以上の中での入れ替えです。一方、書記のみなさんは5年という限られた年限で、2回ぐらい一緒になる書記はいますが、2期目以降は、たまたま縁があって、4年連続でお世話になった書記がいて、現在の書記は異動して来て以来3年連続お世話になっています。狙ってなるものではなく、たまたまの異動がこうなるのは縁ですね。
国会では、各省庁の採用と同じで衆議院や参議院で採用された職員が国会で働いている一方、川崎市の場合は、川崎市役所で採用された職員が議会局に異動になるということで、国と地方では異なります。書記が行政職員として〇〇局や〇〇区役所に異動していくこともよくあり、異動先で別の形で一緒に仕事をすることもあります。
議員が動けば書記も動く
市議会は、本会議や委員会が開催していない日も、日々動いていて、議員が動けば書記も動きます。お世話になっているとはいえ、ともに仕事をしますので、時に厳しいアドバイスもしますが、基本的に書記のみなさんは、市民の代表である議員が、市民の想いをカタチにしていくサポート役で、議会運営の黒子役です。
私たち議員は、委員会だけでなく、議会局職員(書記)のサポートもあって議会活動を行っています。閉会中によく用事をお願いしている立場としては、がんばってもらってることに感謝です。
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著者について
月本琢也 ツキモトタクヤ
1978年生まれ。神奈川大学卒業後、建築設備メーカーの営業マン、川崎市長阿部孝夫政務秘書、衆議院議員山内康一第二秘書(麻生区担当・国会担当・自民党→みんなの党)等を経て、2011年より川崎市議会議員(麻生区選出、当選3回、現在無所属)。交渉会派団長2回、議会運営委員会委員、川崎市農業委員、川崎市都市計画審議会委員等を歴任。今年度は文教委員会委員を務めている。13,000人の職員を巻き込んだ決算議会改革の実現、防犯カメラ設置補助事業の導入の実現など、ICT・コミュニティ・実効性から、SDGsのゴールを含めた持続可能なまちづくりを目指す。その他に、防災士、神奈川県クッブ協会代表理事等を務める。