主権者教育の成果と投票率の関係性

touhyouritu18歳投票率が高かったことを「主権者教育の成果」という答弁がありましたが、その成果の指標は、報道の数や広瀬すずさんの宣伝効果があった参議院選挙ではなく、市長選挙で現れると思います。

その一つが投票率。

以下、そのまま月本たくやレポート第34号より。

 

 

18歳投票率が政令指定都市トップという結果から

昨年の参議院選挙に18歳選挙権がスタートしました。川崎市の18歳の投票率は、政令指定都市第一位という結果で、主権者教育や常時啓発事業を始めとした取組についての一定の成果が出ていると言えます。

しかし、1回国政選挙に行ったというのがゴールではなく、平均を下回った、19歳から30代までの投票率が今後どのように変化してくるかが、主権者教育の評価の一つのポイントになって来ます。

選挙は、そのときの政治情勢や争点、候補者の顔ぶれなどで投票率が左右される点はありますが、投票行動をすることが大切です。適任者がいなければ、白票を投じるのも一つの意思表示ですので、投票率は主権者教育の一つの成果指標になり得ます。

 

主権者教育の成果としての投票率

図のように、20代から年代が上がるとともに投票率が上昇していく傾向にあります。

昨年の選挙では、18歳選挙権スタートということで様々なメディアで取り上げられ、選挙があること自体の啓発効果もあったため、全国的に18歳の投票率が高かったという結果につながっていたように思われます。

しかし、川崎市教育委員会は、18歳の投票率が高い理由を、選挙管理委員会の啓発と主権者教育の成果という趣旨の見解で答弁をして来ているため、今後の選挙における投票率にもつながって来なければいけません。

川崎市で18歳選挙権の開始後、初めての地方選挙が今年行われる市長選挙です。市長選挙は10月頃執行され、他の選挙の実施時期と異なるため、どうしてもメディアでの宣伝が少なく、4年前の投票率は32%台、8年前が36%台と実に低い投票率になっています。

そこで、主権者教育の成果が上がっているとすれば、10代投票率はメディアに多少の影響は受けるものの他の世代より高い投票率になるということになります。ただ、学生や社会人として新たに川崎市外から転入される方も含まれるため、川崎市で教育を受けた人がどれだけ投票に行ったかについて、報道機関の出口調査の機会に協力を頂いての検証が必要であると提案しています。

 

新たな啓発について

川崎市長選挙として初めて18歳選挙権が始まるわけですから、啓発方法が4年前と異なるわけです。これは、先ほど指摘しているように、昨年の参議院選挙とは違って、選挙の報道が極端に少ないという反面、地域に密接に関わる川崎市の行政のトップを決めるという特性から、主権者教育の成果を分析できる機会になるとも言えます。

日頃の啓発として、選挙出前講座や中学校生徒会役員選挙協力事業、模擬投票等の事業の推進を進めて来ていたことに加え、平成28年度は小学校の給食メニューの模擬選挙を行い、実際に一位になったメニューを給食として提供した取組があります。

そして、広報の面では、これまで市内の高校や中学に横断幕を掲げていた広報に加え、小学校全校にのぼり旗を立てて啓発を行うということで、未来の有権者への意識啓発だけでなく、子どもを通じて親世代への啓発につなげてくことになります。言い換えれば、投票率が全世代平均を下回る20代から40代前半への啓発になります。

また、法改正により、昨年の参議院選挙から、選挙人が子どもを同伴して投票所に入場できるようになったことを活用していくという方針が示されました。この中には、私が昨年提案し、実現しましたが、同伴した子どもたちに向けて、投票所の説明資料を置くようになったことも新たな啓発の機会になっています。

 

教育委員会だけでなく関係機関との連携について

「昨年の参議院選挙の18歳投票率が高かったと言っても・・・」という切り口で話して来ましたが、この結果を受け、川崎市教育委員会では、平成28年度に始まった小中学校教育を対象とした主権者教育研修会議、平成29年度には高校教育研究会議を設置しました。この会議のメンバーは、主に学校教諭や指導主事で、ひとりの大学教授を除き、教育現場以外の専門家がいません。

18歳投票率が高かったことについての質問が出ると、主権者教育の成果であるという答弁で、必ず並行して選挙管理委員会の出前講座や模擬投票が紹介されます。それなのに、選挙管理委員会関係者等の専門家がメンバーに入っていない矛盾点を指摘しています。

教育委員会と選挙管理委員会は、「主権者教育の手引き」という指導方法をまとめた冊子の作成で連携した実績があるものの、その後に共同で研究や研修を行っているようなことは見受けられず、初めての18歳選挙ではなく、これから真価が問われるので、一層の連携と幅広い研究を求めています。