先日の新聞で県内公立の全日制高校卒業後の大学進学者割合が57%、専門学校は22%で就職者はわずか10%程度ということ。
少子化が進み、一人当たりの教育費がかけられるという理由で、とりあえず大学に進学する人が増えている現象が見受けられます。
一方、所得格差が教育格差につながっているという傾向から、奨学金制度の充実に向けて様々な検討が始まっています。
今朝の新聞では、出世払い形式の奨学金導入が検討されているとのことです。
私は高等教育への奨学金制度の充実には賛同しますが、大学入学後にどのように過ごし、どのように社会に出て活躍していくかが重要であると思います。
ブルーカラーの力
我が国ではホワイトカラー育成を育成し、ブルーカラーが少なくなっている傾向があります。
ホワイトとブルーと表現すると、ブルーカラーが劣っているような錯覚に陥りがちですが、ブルーカラーは専門職。
ものづくりの国である我が国を支えてきた多くの人がブルーカラー。
手に技術を持つ人もいれば、設計やデザインなどのクリエイティブな仕事をする人もいて、様々なプロフェッショナルがいるのがブルーカラーです。
シンガポールのITE
昨年、シンガポールの技能教育学院(ITE)を視察しました。
シンガポールでは一握りのエリートだけが大学に進学し、国や経済界の指導者になっていくというシステムでしたが、国民全体の生活水準アップを目指し、ITEを設置しました。
ITEは11分野101コースがあり、航空宇宙のエンジニアから看護・ヘルスケア、調理、ホテルパーソン育成など、様々なコースに分かれ、職業訓練を受けます。シンガポールは淡路島の面積とほぼ同じ国土ですから、これらの人材はシンガポール国内だけでなく、国外でも専門性を発揮し、企業からITE出身者の評価が高いということです。
シンガポールでは中学卒業後(シンガポールは中学が4年制)に高校進学の選択肢の一つとして、ITEが含まれます。
視察時にお茶うけとして出されたケーキはITEのパティシエ専攻の学生が作ったもので、日本人の味覚に合わせたものだったことに、感激と驚きを覚えました。
競争原理と自己責任のイメージの強いシンガポールですが、国民に生きる力がなければいけないと考えているのも事実です。
大学進学率よりも大切なこと
我が国では、ホワイトカラーの育成を中心に進めて来た結果、個のことばかりを考える人が増える傾向にあり、強いプロフェッショナル集団ではなく、弱いゼネラリストの集まりになって来ています。
そこで、大学進学率のパーセントよりも進めていくべきことがたくさんあります。
・中等教育段階での積極的な職業教育
・高等教育段階でのインターン制度の充実
・小中段階での塾代助成制度(学習塾だけでなく文化芸術分野なども含む)の導入
・高等教育における給付型奨学金制度(各所属における成績優秀者)の充実
・貸与型奨学金制度の無利子化の促進など
・シンガポールのITEのような教育機関を設置していくことが大切です。我が国の一部の高等専門学校はITEと同様の役割を担っているところもありますが、様々な分野での設置が必要
このように、大学進学率が上がることが「いい教育を受けている」のではなく、国民が自立するためにどのような教育を受けるかが大切です。
国民一人一人に合った教育を選択できる機会を均等にしていくことが大切で、職業教育を受けないということは、情報を知らないという点で機会に欠けているということになります。
生きる力をつけるために、今後も、このような提案を進め、未来に向け、しっかり実現していきます。