都市を人の体に例えると、道路や鉄道は血管であり、人は血液で、交通は心臓にあたります。毛細血管まで血が通うことこそが、健康な身体をつくることで、都市も血液がしっかり流れる健康体のように、人が動けるまちになることが大切です。
自動運転技術の進展は、今後のまちづくりに大きな期待が寄せられるところですが、実用化されるまでに、時間がかかります。その間においても交通不便を解消していくために、どのように取り組んでいくべきか、昨年12月と今年3月の議会質問で取り上げた、地域交通について、将来につながるビジョンを考えて行きましょう。
運転手不足について
様々な業種で、人材不足が言われている昨今、バスやタクシーなどの公共交通での運転手不足が指摘される中、インバウンドによる交通需要の高まりに合わせ、運転手の労働時間の上限が加わった2024年問題で、さらに運転手不足になりました。

上の図は、バス・タクシー運転手の年齢構成比についてですが、特にタクシー運転手は高齢化していて、60歳以上で55.9%、このうち70歳以上が20%近くを占めています。
言い方を変えると、5年後には20%近いタクシー運転手が引退すると仮定できるため、駅前にタクシーが止まっていない状態が続くだけでなく、アプリ等で手配しても来ないという状況は今よりも深刻になると考えられます。
自動運転について
自動運転技術は、下図のように、5つのレベルに分類されています。

レベル1・2はドライバー監視の運転になり、3~5はシステム監視の運転になり、レベル1・2は現在の実装レベルです。現在、羽田イノベーションシティではレベル4の実証実験が進められており、川崎市では2027年度の実装化を目指し、2025年1月よりレベル2での実証実験を実施します。
実証実験を始めるにあたり、技術的な課題の克服もありますが、制度面での整理を進める必要があります。2027年度に川崎市内で2路線が実装化したとしても、新たな路線の検討には、様々な法律による許可等の事務手続きに時間がかかり、他路線への横展開にはさらに数年を要すると考えられます。
運転手不足と自動運転のこれから

上の図のように、自動運転レベル4の実装化が進むものの、2030年時点では、運転手不足の状況は変わらず、今後およそ10年は続くと思われます。しかし、2040年頃には自動運転が定着し、多くのバス路線でレベル4での自動運転が進み、余裕のあるバス運転手は地域交通やタクシーの運転手に充当できると予想され、運転手不足を自動運転がカバーできる時代が来ると考えられます。
自動運転が定着するまでの地域交通をどう考えるか?
交通不便地域については、従来型のコミュニティ交通に加え、AIオンデマンド交通の普及により、効率的な移動を考えていかなければならず、AIオンデマンド交通は様々な実証実験が進められているところです。
コミュニティ交通は、お年寄りの乗り降りが多いということから、時刻表通りには行かず、遅れることがあるという前提での利用の理解を深めることが大切です。また、頻繁に走るわけではないため、時刻表に合わせるようライフスタイルを見直していくことも必要です。
一方、AIオンデマンド交通は、乗車したい人たちがスマートフォン等で予約し、その乗客の乗車ポイントと降車ポイントを人工知能で解析し、最適ルートで運行する乗り合いバス(タクシー)になります。新百合ヶ丘周辺でMaaSの実証実験が行われましたが、これがAIオンデマンド交通の一つです。
コミュニティ交通の推進にあたり、アプリを作成し、車両の現在地情報や残席情報がリアルタイムで分かるほか、交通に関する情報を始め、地域のイベント情報を知ることができます。今後はアプリで予約を可能にすることも検討されます。これまでは、「高齢者=ICT難民」と言われていましたが、80代前半でのスマートフォン所有率が6割を超えており、簡単なアプリであれば、使える時代になりましたので、今後のアプリの活用により地域交通の利便性の向上と効率的な運行が進むと考えられます。
アプリの活用は、現在のコミュニティ交通実証実験でも進められていますので、人手不足の中での地域交通の推進に向けて、期待できます。
人々の暮らしをつなぐ交通政策への投資
令和7年度予算では、令和9年度の自動運転レベル4実装化に向け、昨年度に引き続き実証事業が進められます。また、コミュニティ交通の実証事業期間における経費補助とワゴン車両購入経費補助が新設され、モビリティ・ハブの形成についても新規計上されました。
コミュティ交通は、片平のかきまる号、宮前区のつばめ号の実証事業では、外出のことづくり事業が進められて来ました。外出の機会を増やすことで、一人一人の生きがいづくりを支援し、健康に年を重ねていくきっかけになり、介護予防につながります。つまり、コミュニティ交通を核として、健康づくりにつながります。
また、今回のかきまる号の利用者アンケートをGoogleフォームで取るため、外出のことづくり事業の一環で、「スマホ活用術」の講座を実施したところ、多くの参加者が集いました。「スマホは持ってるけど、変な操作をして課金されるのが恐い」「何度も同じことを家族に聞いているとケンカになってしまう」等の理由で、使い控えをしている高齢者が多く、「信頼できる人から教えてもらって、便利に使いたい」という想いがありました。今回の講座の参加者はほぼ全員Googleフォームでアンケートに答え、今後もスマホ活用のイベントの開催を求める声がありました。
この点は、タクシーアプリの活用やオンデマンド交通の可能性を感じるものになりました。
新規予算にあるモビリティ・ハブの形成については、駅から離れたバスの折り返し所を拠点として、その周辺は、グリーンスローモビリティー(いわゆるカート車)、シニアカー、電動キックボード等に乗り換える場所の整備の検討になります。
今後は、交通事業単体として採算性を考えるのではなく、介護予防や子育て支援、地域経済への影響を含めた都市の価値の総合的な観点から交通への投資を進めるべきと市長に提案しました。市長からは「本市の施策に総合的な効果を発揮できるよう戦略的かつスピード感を持って取組を進める」との答弁でした。交通を単体ではなく、総合的な効果を見るという新しく大きな一歩につながる答弁になりました。
